「健康づくり」という言葉を私たちによく使います。
WHOによると、健康づくりの考え方は、19世紀から20世紀にかけて
社会のありかたの変化や個人という概念の台頭、
そしてさまざまな医学的発見に影響され、揺れ動きつつ、
現在あるような考え方へと変化していきました。
健康づくりの発祥は19世紀の公衆衛生の先駆者の仕事にまでさかのぼります。
19世紀のイギリスでは、産業革命の影響を受け大きな街の労働者には貧困と過酷な労働状況、
劣悪な生活環境と、いくつもの重荷が背負わされていました。
このような社会状況は必然的にいくつかの社会的課題を招きました。
その一つが、コレラ、インフルエンザなど感染性疾病の大流行です。
疾病は多くの市民に広がり、社会の安定への脅威となりました。
改革者たちは地方自治体の改革を通して社会状況の改善を強く訴えました。
1875年に彼らの訴えは一つの法令になります。
都市の水道供給、下水処理、動物処理の管理について定めた公衆衛生法令の採択です。
法令に基づいた環境の整備は、感染性疾病の減少に大きな影響を及ぼしました。
これは臨床医学が感染症の病原体や抗菌薬を発見するよりずっと前の出来事でした。
19世紀の後半までに、疾患の流行による脅威はいくぶんか低下することとなりました。
また数多くの医学的発見は人間の生物医学的な性質を明らかにしつつありました。
また個人のありかたも時代とともに変化し、健康づくりの考え方は、
環境的な手段から個人教育に焦点が絞られるようになり始めました。
健康づくりはやがて、この教育的な手法へ偏るようになりました。
教育的な健康づくりは、次第に心臓病の予防、がんの予防、高血圧の予防、
糖尿病の予防と健康を脅かす多くの疾患の一つ一つの予防を
重視する風潮へと発展していくこととなります。
より病気になりやすい人を特定し、予防する手法なども広まっていったのです。
現在は、あらゆる健康情報の発信が主流になり流される
情報の信頼性より新しさや派手さが求められてしまいます。
コロナ禍を経験した私たちはもう一度「健康づくり」の
基本から学びなおすことが必要なのかもしれません。